判断力を養いたければ本を読みましょう!

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第41回

~『学問のすゝめ』(福沢諭吉著)を読んで学んだこと~

 

なぜ学ばなければならないのか

 

日本人であれば福沢諭吉を知らない人がいないように、本書も日本では知らない人がいないほど有名です。さしずめ、福沢諭吉=学問のすゝめ、と言えるほど、本書は福沢諭吉先生の代表的な著作ですが、実際に本書を読んだことがある日本人はいったいどれほどいるのでしょうか?

西洋の聖書、東洋の論語ではありませんが、近代日本にとっては、この『学問のすゝめ』が聖書や論語のような役割を果たしたことは疑うべくもありません。何せ、明治維新当初の日本の人口は3000万人だったらしいのですが、最終的に300万冊以上売れたらしいのです。つまり、少なくとも10%以上の日本人が購入したことになり、今で考えれば1000万冊以上売れた計算となり、ミリオンセラーどころの話ではなくなります。

それはともかく、現代の日本人にも延々と読まれていることを考えると、実際の上でも日本全体に対する貢献度は計り知れませんし、今回、昔読んだことのある本書を引っ張り出してきて再読しましたが、福沢諭吉が一万円札の肖像画になっているのも、旧五千円札の肖像画であった新渡戸稲造が、彼を教育の父と褒め称えたのも頷けるというものです。

今回、引用したいところは多数ありましたが、あえて下記の部分を引用します。

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E6%9C%AC-%E8%AA%AD%E3%81%BF%E5%8F%96%E3%82%8A-%E5%8F%A4%E3%81%84-%E6%96%87%E5%AD%A6-%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8-%E6%9B%B8%E7%B1%8D-%E6%9C%AC%E6%A3%9A-%E5%8F%A4%E3%81%84%E6%9C%AC-%E3%82%AB%E3%83%90%E3%83%BC-1659717/

 

【この本のポイント!】

学問のすゝめ 十五編

「取捨選択」を誤るな

人間が物事を盲信すれば、嘘・偽りがはびこり、疑うところに真理が生まれる。(中略)

●真理の探究はつねに「懐疑」からはじまる

文明の進歩は、天地の間にあるすべての物の働きを研究して、真理を発見することにある。西洋文明の発達の原因も、すべて疑いを持つという精神から発した。
ガリレオは天動説に疑問を持ち、地動説を考案し、ガルバーニは蛙(かえる)の足の痙攣(けいれん)するのを目撃して、動物電気を発見した。ニュートンはリンゴの落下から万有引力の法則を発見し、ワットは鉄瓶(てつびん)の湯気(ゆげ)に関心を持ち、蒸気機関を発明した。みな、事物に疑問を持ち、そこから真理に達したわけである。(中略)
ところで、疑いの心を抱き異説を唱え、真理を求めるのは、逆風のなかを航海するようなものである。航海においては、ときに順風に遭(あ)い、船を進めることができるだろう。しかし、人間社会では、そんな幸運にはまず出会うこともない。
真理に到達する方法はただ一つ、自説と他説との論争を乗り切ることのみである。同時に、社会に多くの議論が生じるのも、いままでの社会に疑問を抱く精神から発するのであり、「疑うところに真理は生まれる」とはこのことを言っている。

●何を信じ、何を疑うか

しかし、事実を単純に信じるな、とは言うものの、疑うばかりではいけない。何を信じ、何を疑うか、選択する力が必要なのである。学問とはつまるところ、この判断力を養うところにある。(中略)

●判断力を養うのは学問しかない

(中略)現在の進歩主義者が、日本の旧習を嫌って西洋の文物をことごとく信用するのは、じつに軽率の極みである。日本の旧習を盲信してきたのと同じ態度で、新しい西洋文明を盲信し、欠点までも真似しようとしているのだ。
そのはなはだしさは、信じるべき思想をまだ探りもしないうちに、信じてきた思想を捨てたために、精神の安定に異常を生じた者がいるほどである。医者の指摘によると近年ノイローゼや精神病にかかる人間が多いという。
西洋文明を学び習うのは良い。しかし無批判に信用するくらいなら、いっそ信じないほうがまだましである。(中略)
だからと言って、日本のあらゆる現状がいまのままでいいのか、と考えると、きわめて疑わしい。新しい西洋の思想や文物がどんどん流入する、新旧混乱の世の中で、西洋と日本の文明を比較し、信ずるに足るものを信じ、疑わしい点に疑問を持ち、どれを採り入れ、なにを捨てるか、正しく選ぶことが大切なのである。(中略)
多くの書物を読み、冷静に判断して知識を養い、実地に真実を追求すべきである。昨日信じていたことは、今日、大きな疑問となり、明日、その疑問は解決するであろう。だから、学生は、学ばねばならぬのである。
(明治九年七月出版)

『学問のすゝめ』P174~184

 


画像引用元:
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何かを判断するためには、比較検討する必要があります。そして、その比較検討するベースが多ければ多いほど、より正確な判断が可能となります。

そのためには、より多くの書物を読み、より多くの経験を積む必要があります。

本書に書いてあることは、ほとんどがある意味当たり前のことなのですが、逆に言えば、徳川300年の太平と変化のない日々に慣れ切ってしまっていた当時の日本人は、その当たり前のことすらできていなかったのかもしれません。

ただ、現代の日本人が本書を読んでも新しい発見を感じるのは、現代においてもその当たり前のことができていない人がまだまだたくさんいるということです。

たとえば、現代では孔子の論語に書いてあることを盲信する人がいますが、福沢諭吉は、たとえ相手が孔子であっても、ここは良い、ここは悪い、とハッキリと指摘しています。また、日本人が大好きな赤穂浪士は、義士ではなくただのテロリストだと断言しています。

これらは、福沢諭吉の知識と経験の量とそれに裏付けされた冷静な判断力がなせる業なのだと本書を読んで感じました。

いずれにせよ、本書の極意は冒頭に書かれている次の言葉に凝縮されていると思います。

 

【この本のポイント!】

学問のすゝめ 初編

天は人の上に人を造らず

●人に貴賎はないが、勉強したかしないかの差は大きい

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言われている。天が人間を生じせしめたときから、万人はみな同じ地位・資格を持ち、生まれながら平等であるということだ。貴(とうと)いとか賤(いや)しいといった身分上の差別などない。(後略)

『学問のすゝめ』P13

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E5%9C%B0%E5%9B%B3-%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E5%9C%B0%E5%9B%B3-%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%95-%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97-%E5%9C%B0%E7%90%83-%E5%A4%A7%E9%99%B8-%E4%B8%96%E7%95%8C-%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB-221210/

 

そのうえで、ただの知識だけでなく、実学を学べと福沢先生はおっしゃっています。
また、知識を得ただけで満足せず、得た知識を活用するために行動しろとも諫めています。

本書には書かれていないエピソードですが、福沢諭吉は、日本がまだ鎖国していたころは一生懸命にオランダ語を学んでいたそうです。日本が鎖国していたころは、とはいっても、清とオランダとは交易していたわけですから、鎖国とは言っても名ばかりで、江戸幕府の役人など、一部の人間が儲けてだけですが、それはともかく、苦労してオランダ語を身につけたそうです。

ところが、開国して横浜へ行ったところ、オランダ語がまったく通じません。標識も読めるようで読めません。なぜなら、当時の横浜の外国人居留地では、オランダ語ではなく、英語が主流だったからです。福沢諭吉もそれはそれはがっかりしたそうです。時間を無駄にしてしまったと。

ところが、奮起して英語を勉強してみたところ、オランダ語と似ているところも多く、オランダ語を勉強したことを一旦は後悔したものの、オランダ語を身に着けたお蔭で、英語はさほど苦労せずに身に着けることができたそうです。

これは、何かを極めると他のことにも通じるということが言えますし、また、行動することの大事さを表すエピソードであるともいえます。

なお、本書に限らず、この時代の原書は、日本語であっても言い回しが難し過ぎますので、本書のような現代語訳を選んで読まれることをオススメします。

 

一介の読書オタクより

 


 画像引用元:https://www.amazon.co.jp/%E5%AD%A6%E5%95%8F%E3%81%AE%E3%81%99%E3%82%9D%E3%82%81-%E4%BA%BA%E3%81%AF-%E5%AD%A6%E3%81%B3%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%81%AA%E3%81%91%E3%82%8C%E3%81%B0%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84-%E7%A6%8F%E6%B2%A2-%E8%AB%AD%E5%90%89/dp/4837918808/ref=sr_1_4?ie=UTF8&qid=1497088332&sr=8-4&keywords=%E5%AD%A6%E5%95%8F%E3%81%AE%E3%81%99%E3%82%9D%E3%82%81

参考図書:『学問のすゝめ』
発行年月:2001年3月
著者:福沢諭吉(ふくざわ・ゆきち)
現代語訳・解説者:檜谷照彦(ひのたに・てるひこ)
発行所:三笠書房

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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